対振り飛車の端玉銀冠

はじめに

対振り飛車の端玉銀冠は下図のような構えを指します。

端玉の名の通り9八(後手番なら1二)に玉を持っていくのが特徴で、通常の銀冠よりも一路遠くなっています。

このため、ヨコからの攻め合いになった際に速度計算の面で有利になることや、玉が8八にいないため△5五角のような手が王手にならないのも利点です。

その半面、8~9筋を歩、桂、香を使って攻められるのに弱いという弱点もあります。

今回の記事では対振り飛車の端玉銀冠の将棋を将棋倶楽部24の実戦を題材として検討していきます。

対振り飛車の端玉銀冠の実戦例

実戦例その1

開始日時:2018/08/22 15:10:47
棋戦:R対局(早指)
先手:JKishi18gou(3237)
後手:後手

(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二飛

先手がJKishi18gouで後手は角道を止めた四間飛車にしました。

(上図からの指し手)
▲6八玉 △7二銀 ▲7八玉 △3二銀 ▲9六歩 △9四歩▲5六歩

端玉銀冠を目指す場合、玉側の端歩は突きます。よって先手から▲9六歩としました。

(上図からの指し手)
△6二玉 ▲8六歩 △7一玉 ▲8七玉 △5二金左 ▲5八金右 △4三銀 ▲7八銀 △6四歩 ▲5七銀

端玉銀冠はまず天守閣美濃を経由することからスタートします。

▲5七銀まで進んで相手の応手を見ます。

(上図からの指し手)
△7四歩▲3六歩 △8四歩 ▲9八玉

後手の△7四歩に対して▲2五歩△3三角▲3六歩△8四歩▲4六銀(手順最終手)として天守閣美濃の陣形から攻める指し方もあります。

ポイント
以下△3二飛▲3五歩と仕掛けていい勝負です。

この指し方も有力ですが、本局では天守閣美濃から端玉銀冠に持っていきます。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
△8二玉 ▲8七銀 △8三銀 ▲6八金寄 △7二金 ▲7八金上

はじめにでも説明しましたが、33手目▲7八金上までで端玉銀冠の完成です。

ここから先手は攻めの態勢を作っていきます。

(上図からの指し手)
△6三金左 ▲3八飛 △3二飛▲4六銀 △5四歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 飛

本局の先手は▲2五歩を突いていないのが工夫している点です。

そして▲4六銀~▲3五歩と仕掛けていきました。

(上図からの指し手)
△同 飛 ▲同 銀 △3九飛 ▲4二飛 △3三角 ▲4三飛成 △3五飛成▲3四歩

▲3五同飛には△3三角として受ける手も考えられました。以下、▲3七桂△3四歩▲3六飛△6五歩(手順最終手)のように進むのが一例です。

本譜は▲3五同飛に△同飛~△3九飛と銀取りに飛車を打ちましたが、これには▲4二飛の角銀両取りが好手です。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
△2四角 ▲2三龍 △2六龍 ▲6一銀 △6二金寄 ▲4四角

△2四角▲2三龍と進んだ局面で、後手はそのタイミングで△9五歩と端に手を入れておくのがまさりました。

以下▲同歩に△9七歩(手順最終手)と王手されると先手としても嫌なところです。

ポイント
以下▲同角△2六龍と進めば、先手は▲4四角と出る筋がなくなっているので本譜よりも難解な形勢です。

本譜は単に△2六龍としたため、▲6一銀~▲4四角が厳しくなりました。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
△2九龍 ▲2四龍 △同 龍 ▲5一角 △6一金▲2四角成 △7二銀打 ▲3一飛

後手は龍を逃がして△2九龍としましたが、▲2四龍△同龍▲5一角が厳しい追撃です。

▲5一角に対して△2二飛として受けるのも以下▲2四角成△同飛に▲3二飛(手順最終手)先手好調の流れです。

ポイント
以下、△7三銀打には▲5二銀不成△同金▲同飛成△7二銀打に▲8五歩で攻めがつながります。

本譜も▲3一飛まで快調な攻めが続き、以下先手の勝ちとなりました。

この将棋の棋譜は以下から


実戦例その2

開始日時:2018/04/02 22:17:53
棋戦:R対局(15分)
先手:先手
後手:JKishi18gou(3238)

(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △6四歩 ▲6八飛 △6二銀 ▲4八玉 △6三銀 ▲3八玉 △5四銀

端玉銀冠の将棋をもう一局みていきます。

後手がJKishi18gouで先手のノーマル四間飛車に対して△6四歩~△5四銀として腰掛け銀にしました。

(上図からの指し手)
▲2八玉 △1四歩▲1六歩 △4二玉 ▲3八銀 △3二玉 ▲5八金左 △5二金右▲7八銀 △2四歩 ▲6七銀 △2三玉 ▲4六歩 △3二銀

△5四銀型であっても端玉銀冠を目指すにあたっての駒組みは、実戦例その1でみてきた手順とほとんど変わりはありません。

やはり△1四歩と玉側の端歩を突いてから天守閣美濃に組み上げました。

(上図からの指し手)
▲3六歩 △7四歩 ▲2六歩 △4二金寄 ▲3七桂 △1二玉 ▲2七銀 △2三銀 ▲3八金 △3二金上

天守閣美濃から端玉銀冠に持っていきます。△3二金上で囲いは完成したのでここから攻めの形を作っていきます。

(上図からの指し手)
▲7七角 △8四歩▲4七金左 △7二飛 ▲7八飛 △7五歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲5六歩 △6五歩

▲7七角 △8四歩▲4七金左と進んだ局面で後手は△7二飛と飛車を寄りました。

△7二飛では△7三桂も有力で以下▲5六歩△9四歩▲6九飛△6二飛(手順最終手)と進んで右四間飛車にする構想もありました。

本譜は△7二飛~△7五歩として7筋から攻めていきます。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
▲7六歩 △7二飛 ▲6八飛 △7五歩▲同 歩 △同 飛 ▲7六歩 △7四飛 ▲4五歩 △7三桂

△6五歩に対して▲同歩は△7七角成▲同飛△同飛成▲同桂に△6八飛(手順最終手)として飛車を先着して後手よしです。

本譜は△6五歩に対して▲7六歩として受けました、その後は後手は細かい動きをしつつ、右桂を活用して好調です。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
▲9八香 △3三角 ▲8六角 △6六歩 ▲同 銀 △7六飛▲7七銀 △6七歩 ▲7六銀 △6八歩成

先手は次第に手の待ち方が難しくなっています。▲9八香に代えて▲6五歩としたいところですが以下、△7七角成▲同桂△5九角▲7八飛△6六歩▲同銀△7六飛▲5七金△6五桂(手順最終手)と進んで後手の攻めがつながります。

よって本譜は▲9八香と待機しましたが、後手もじっと△3三角と上がって次に△8五桂を狙います

先手は▲8六角と上がりましたが、今度は△6六歩~△7六飛の攻めが生じました。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
▲1五歩 △同 歩 ▲2五歩 △6九飛 ▲6一飛 △8九飛成 ▲9一飛成 △1六桂▲同 銀 △同 歩 ▲6八角 △1七銀

端玉銀冠は端からの攻めがひとつの弱点ですが、本局は中盤までで後手が有利な局面となったので端攻めを怖れることはありません。

△6九飛から桂馬を取り、△1六桂としたのが相手の端攻めを逆用した手順で後手の勝ち筋となりました。

この将棋の棋譜は以下から

対振り飛車の端玉銀冠のまとめ

  • 端玉銀冠は玉側の端歩を突くことと天守閣美濃を経由することが基本となります。
  • 端玉銀冠に組んだ後は攻めの形を作っていきます。本記事では▲3八飛や△7二飛として3筋、7筋から攻めていく指し方をみていきました。
  • 端攻めは端玉銀冠の弱点ですが、丁寧に対処すれば大丈夫です。端攻めを逆用する手順が参考になります。

その他参考棋譜

参考棋譜

参考書籍

端玉銀冠について解説された数少ない戦術書です。

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