はじめに
石田流は▲7六歩△3四歩▲7五歩の出だしをはじめとしてアマチュア間では級位者から高段者まで人気の高い戦法です。
7六の飛車を基軸として角、銀、桂を駆使しての攻めは攻撃力があり、苦手としている居飛車党の方も多いと思います。
以前にコンピュータ将棋研究Blogのほうで、最強の証明 ―石田流本組み破りponanza流△6三金型― という記事を投稿したところ、多くの反響がありました。
参考
最強の証明 ―石田流本組み破りponanza流△6三金型― コンピュータ将棋研究Blog
この記事を投稿してから月日も経っているので、今回こちらのブログの方でも同テーマで書くことにしました。
基本的な手順からじっくりと検討していきたいと思います。
石田流対策の△6三金型の基本の実戦例
実戦例その1
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/236033
開始日時:2018/07/20 14:57:01
棋戦:将棋ウォーズ(10秒将棋)
先手:先手
後手:PonaInfinity
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3二金 ▲7五歩 △4二玉 ▲7八飛 △3四歩 ▲6六歩(下図)
本局は初手▲7六歩に対して△3二金としました。以下▲7五歩から先手は石田流を目指します。
△3四歩に対して▲6六歩は妥当なところで、▲4八玉とすると以下△8八角成▲同銀△4五角▲5五角△2二銀(参考図)と進んで後手が指しやすくなります。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△3三角 ▲6八銀 △2二銀 ▲6七銀 △2四歩▲4八玉 △2三銀(下図)
後手は△3二金と上がった手前、△3三角としてから△2二銀~△2四歩~△2三銀として銀冠に組み上げます。
(上図からの指し手)
▲3八銀 △8四歩 ▲1六歩 △1四歩 ▲3九玉 △6二銀 ▲9六歩 △3一玉 ▲5八金左 △2二玉(下図)
先手は美濃囲いを選択し、後手は△2二玉まで玉を移動して銀冠に組みました。
(上図からの指し手)
▲7六飛 △5四歩 ▲7七桂 △6四歩 ▲9五歩 △5二金 ▲9七角 △6三金(下図)
▲7六飛で▲7四歩としてくる手が気になるかもしれませんが、△7二飛▲7三歩成△同銀(参考図)と対応すれば大丈夫です。
参考図以下
▲2八玉△5四歩▲5六歩△6二金のような進行が一例ですが、後手はすべての駒が使えているので不満がありません。
本譜は▲7六飛~▲7七桂~▲9七角として石田流の本組みが完成しました。
対する後手は△6四歩~△5二金~△6三金として、本記事のタイトルにもあるように△6三金型に組み上げました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5六銀 △5五歩 ▲6七銀 △5三銀▲5六歩 △4四銀(下図)
△6三金型の長所はひとことで言うと「守備力が高い」ことにあります。
△6三金に対して▲6五歩△同歩▲5六銀として攻めていく指し方は石田流の常とう手段ですが、以下△5五歩▲6五銀△6四歩(参考図)とすればこれ以上先手は攻めを続けることができません。
Check
△6三金型の長所が出た局面です。仮に△6三銀型ならば▲7四歩として攻めが続きます。
本譜は単に▲5六銀と出ましたが、これにも△5五歩として銀を追い返します。(▲4五銀は△3五歩で銀バサミとなります。)
その後は相手の手に乗って△5三銀~△4四銀と銀を活用します。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7九角 △5六歩 ▲同 銀 △7四歩 ▲6五歩 △7五歩 ▲同 飛 △5二飛(下図)
△4四銀に対して▲5五歩とするのは以下△同銀▲5六歩△4四銀▲2八玉に△2五歩(参考図)とするのが好着想で後手の作戦勝ちです。
ポイント
銀冠と△2五歩は相性の良い形です。△3五銀~△2四銀引の駒の活用や、終盤での△2六歩が切り札となります。
本譜は▲7九角としましたが、△5六歩~△7四歩と仕掛けていきます。
△7四歩に対して▲同歩と取ると△7五歩▲同飛△7二飛(参考図)として次に△7四金を狙って後手優勢となります。
本譜は△7四歩に対して▲6五歩としましたが、△7五歩~△5二飛と回って後手指しやすい中盤戦となりました。
(本譜局面図再掲)
上図以下、▲5五歩には△7四歩▲7六飛△7三桂と駒を活用します。
この将棋の総棋譜は以下から
実戦例その2
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/236035
開始日時:2018/02/15 11:18:49
棋戦:R対局(早指2)
先手:先手
後手:JKishi18gou(3156)
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △4二玉 ▲6八銀 △6二銀 ▲6七銀 △3二銀 ▲7八飛(下図)
対石田流△6三金型の将棋をもう一局見ていきます。
本局の後手は△8四歩を保留しての駒組みです。これには先手が▲7八飛とすれば石田流に組みやすくなります。
(上図からの指し手)
△5二金右 ▲4八玉 △1四歩▲1六歩 △2四歩 ▲3八玉 △3三玉 ▲2八玉 △2三玉(下図)
後手は△3三玉~△2三玉として天守閣美濃に組みました。この天守閣美濃も△6三金型と相性が良いです。
(上図からの指し手)
▲3八銀 △6四歩 ▲7五歩 △8四歩 ▲5八金左 △8五歩▲7六飛 △7二飛 ▲9六歩 △6三金(下図)
後手は△7二飛と寄ったあとに△6三金として△6三金型に組みました。
ここでは△6三銀も有力ですが、△6三金は7~6筋の手厚さを重視しています。
(上図からの指し手)
▲9七角 △9四歩 ▲2六歩 △4四角 ▲2七銀 △7四歩 ▲同 歩 △同 金(下図)
△6三金は次に△7四歩▲同歩△同金からの抑え込みを狙っています。
先手は▲9七角として7五の地点への利きを足しましたが、△9四歩としていつでも△9五歩から角を狙えるようにしておきます。
△9四歩に対して▲7七桂とすると以下△7四歩▲同歩△同金▲7五歩△8四金(参考図)として先手は飛車角を捌くことができません。
本譜は▲2六歩としましたが、一回△4四角と出た後に△7四歩▲同歩△同金と攻めていきました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7五歩 △8四金 ▲3八金 △6三銀 ▲4八金左 △9五歩 ▲同 歩 △6五歩(下図)
△7四同金に対して▲3八金とすると△7五歩▲7八飛△9五歩(参考図)として後手の攻めに勢いが出てきます。
よって先手は▲7五歩としましたが、△8四金としてやはり△9五歩等の攻めが残っています。
一回△6三銀と上がったあとに△9五歩~△6五歩と勢いよく攻めていきました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7七桂 △9六歩 ▲同 飛 △9五香▲7六飛 △9七香成 ▲同 香 △7五金 ▲9六飛 △6六歩(下図)
△6五歩に対して▲5六銀と上がると以下△5四銀▲7四歩△7五歩▲7八飛△7四金(参考図)としておけば先手から手出しができなくなります。
ポイント
対石田流△6三金型は金で相手の飛車角の捌きを封じるのが基本的な狙いです。
本譜は△6五歩に対して▲7七桂と跳ねましたが、これには△9六歩~△9五香が厳しい手順でした。
以下角香交換となり後手の作戦は成功となりました。
(本譜局面図再掲)
上図以下、▲5八銀には△9三歩と受けておくのが冷静な一手です。
この将棋の総棋譜は以下から
石田流対策の△6三金型の基本のまとめ
- 対石田流△6三金型の基本は相手の飛車角の捌きを6三の金で封じることにあります。△6三銀型よりも手厚さがあるのが特徴です。
- 後手の玉形は銀冠や天守閣美濃、そして端玉銀冠と相性が良いです。銀冠の場合は△2五歩と突くのも味が良いです。
- △8四金と金を進出した場合、棒金戦法と同じ要領で△9五歩から角を狙いに行くのが厳しくなります。