はじめに
振り飛車穴熊はその堅さからの攻めが魅力のある戦法で、自玉に絶対に王手が掛からない形から攻められると、自陣を全く気にする必要がなくなるため指し手が読みやすくなります。
振り飛車穴熊に対して居飛車側の作戦としては急戦と持久戦に分かれますが、今回の記事では銀冠で振り飛車穴熊に対抗する指し方を見ていきたいと思います。
対振り飛車穴熊には銀冠!の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/235545
開始日時:2018/05/08 08:38:24
棋戦:R対局(15分)
先手:先手(2248)
後手:Hefeweizen(2851)
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲6八飛(途中図)
△1四歩 ▲4八玉 △1五歩 ▲3八玉 △4二玉 ▲2八玉 △5二金右▲1八香 △8四歩 ▲1九玉(下図)
先手は▲1八香から▲1九玉で穴熊を目指しました。対する後手は△1四歩~△1五歩で1筋の端歩を突き越しているのがひとつのポイントです。
(上図からの指し手)
△3三角 ▲2八銀 △3二玉 ▲7八銀 △2二玉 ▲6七銀 △2四歩 ▲3九金 △3二銀(下図)
後手は△3三角~△3二玉~△2二玉で持久戦志向です。
その後、△2四歩~△3二銀で左美濃に組み上げました。
(上図からの指し手)
▲5八金 △5四歩 ▲4六歩 △2三銀 ▲3六歩 △3二金 ▲4七金 △5三銀(下図)
後手は左美濃にしてから、さらに駒組みを進めます。
△2三銀~△3二金で銀冠の形が完成しました。銀冠は上部が手厚く、また金銀の連結がよいので愛用する人が多い囲いです。
(上図からの指し手)
▲3八飛 △7四歩 ▲3五歩 △同 歩▲同 飛 △3四歩 ▲3八飛 △4四歩(下図)
先手は▲3八飛として3筋に飛車を持っていき、▲3五歩から一歩を手にします。
この指し方は定跡化されており、振り飛車穴熊側のひとつの作戦となります。
対する後手は▲3五同飛の局面で△3四歩と打ち、続いて△4四歩として堅実な駒組みを続けます。
(上図からの指し手)
▲5六歩 △4三金右 ▲6五歩 △8五歩 ▲7七角 △8六歩 ▲同 歩 △7三桂(下図)
後手は△4三金右として銀冠囲いを完成形に持っていきました。
ここからさらに△1二香~△1一玉として銀冠穴熊にする指し方も有力ですが、本局の後手は銀冠に組んだことに満足して次に攻めの形を作っていきました。
△8六歩▲同歩の交換を入れてから△7三桂としたのが好手順で、ここで△8六歩を入れずに△7三桂と跳ねる手もありますが、△8六歩▲同歩を入れることによってのちの▲9五角の筋を防いでいます。
(上図からの指し手)
▲6六銀 △7五歩 ▲同 歩 △8四飛(下図)
後手が△7三桂とした局面で次の△6五桂を受けるために先手は▲6六銀と上がりましたが、そこで△7五歩が好手でした。
△7五歩に対して▲同銀と取ると、△6五桂と跳ねることができます。
△6五桂以下①▲6六角には△7四歩▲同銀△8六飛と飛車先を突破して後手優勢です。(参考図)
また、②▲6八角にも△4五歩▲6六歩△7四歩▲同銀△6六角(参考図)と進めば後手成功となります。
したがって、本譜は△7五歩に対して▲同歩と取りましたが後手はいったん△8四飛として次の攻めを狙います。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5五歩 △同 歩 ▲5二歩 △7六歩 ▲5九角 △5四銀 ▲7八飛 △6五銀(下図)
△8四飛と飛車を浮いた後手の次の狙い筋は△6四歩▲同歩△同銀です。
先手は▲5五歩△同歩▲5二歩として将来のと金作りを見せましたが、△7六歩~△5四銀が好手順で以下△6五銀が実現して後手が指しやすくなりました。
(上図からの指し手)
▲同 銀 △同 桂 ▲5一歩成 △5六歩 ▲5二銀 △5七歩成(下図)
△6五銀と銀をぶつけた局面で先手が▲5五銀としてきた場合は、以下△4五歩▲5八飛△5六歩(参考図)と進んで先手が銀取りを防ぎにくくなり、後手優勢となります。
よって先手は▲6五同銀~▲5一歩成(△同角には▲5二銀の狙い)としましたが、構わず△5六歩~△5七歩成が好判断となりました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3六金 △4二金引 ▲4五歩 △5八歩 ▲3七角 △8六飛(下図)
先手は△5七歩成に対して▲3六金と上がりましたが、後手がそこでいったん△4二金引としたのが手堅い一手でした。
その後、△5八歩~△8六飛で飛車を使うことに成功し勝利が見えてきました。
(上図からの指し手)
▲8八歩 △7七歩成 ▲同 桂 △3六飛 ▲6五桂 △4七金 ▲3八歩 △3七飛成 ▲同 銀 △4八銀(投了図)
まで82手で後手の勝ち
先手は△8九飛成を防いで▲8八歩としましたが、そこで△7七歩成~△3六飛と3六の金を取る手段が生じていました。
その後は丁寧に寄せ切り、先手に受けがなくなって後手の勝利となりました。
この将棋の総棋譜は以下から
対振り飛車穴熊には銀冠!のまとめ
今回の記事では振り飛車穴熊に対して後手の居飛車側が銀冠にして対抗する将棋を見ていきました。
銀冠はまず上部を厚くしてから、攻め形を作っていきます。
ポイントとしては右桂をうまく活用することで、本局のように中央に桂馬を使っていける展開は居飛車側が成功しやすい形となります。
△8六歩▲同歩を入れてから△7三桂と跳ねたこと、また△7五歩▲同歩△8四飛として次の攻めを狙ったことなど本局は対振り飛車穴熊のエッセンスが詰まった一局です。