はじめに
三間飛車藤井システムは居飛車側の作戦に応じて、居玉で攻めかかったり、ツノ銀雁木で陣容勝ちを目指したりと臨機応変な戦い方ができるのが魅力的な戦法です。
最近注目されてきた戦法で、佐藤和俊六段による戦術書も出版されています。
今回の記事ではfloodgateの棋譜を題材として、三間飛車藤井システムで居飛車穴熊を攻略する将棋を見ていきたいと思います。
三間飛車藤井システムの急所【居飛車穴熊を攻略】の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
開始日時:2018/11/30 03:30:00
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+gikou2_1c+Pakuri_Dame_Zettai+20181130033001
先手:gikou2_1c
後手:Pakuri_Dame_Zettai
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △3二飛(下図)
後手は角道を止めた三間飛車にしました。
(上図からの指し手)
▲6八玉 △4二銀 ▲7八玉 △9四歩▲7七角 △9五歩 ▲5八金右 △4三銀(下図)
本局の後手は三間飛車藤井システムで戦います。
まずその第一歩として△9四歩~△9五歩として端歩を突き越します。
もし先手が▲9六歩として端歩を受けてきた場合は急戦の可能性があるので、後手も△6二玉から陣形整備をすることになるでしょう。
本局の先手は▲7七角と上がり持久戦志向です。その後、後手は居玉のまま△4三銀としました。
(上図からの指し手)
▲8八玉 △7二銀 ▲5六歩 △7四歩 ▲9八香 △7三銀 ▲5七銀 △9二飛(下図)
▲8八玉△7二銀と進んだ局面ですぐに▲9八香として居飛車穴熊を目指すと以下、△5四銀▲9九玉△6五銀▲2六飛△9三桂▲8八銀△8五桂(参考図)としてトマホーク戦法にされると先手は受け切るのが容易ではありません。
本譜は▲8八玉△7二銀に▲5六歩としました。
これに対して△5四銀とするのは▲6六歩とされるとこれ以上は攻めにくくなります。
よって後手は発想を変えて、△7四歩~△7三銀として右銀を攻めに使いにいきます。
その後、△9二飛は思い浮かびにくい一手ですが、端を狙っていく意味合いです。
△9二飛以外では△6四銀として▲6六銀に△7二飛(参考図)と袖飛車にするのも有力でした。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲9九玉 △8四銀 ▲8八銀 △8五銀 ▲3六歩 △7六銀(下図)
△9二飛に対しては▲6六歩(参考図)として▲6七金の余地を作るのも有力で、そちらのほうが本筋かもしれません。
本譜の先手は▲9九玉から一目散に居飛車穴熊にしましたが、後手は△8四銀~△8五銀、△7六銀として一歩を取りつつ銀を進出させることができました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5五角 △6二金 ▲4六角 △4五歩 ▲5五角 △同 角▲同 歩 △9三桂(下図)
先手の▲5五角には△7三桂や△9三桂と跳ねるために△6二金と上がっておきます。
▲4六角は次に▲2四歩と突ければ先手が面白いですが、このタイミングで△4五歩と突くのが好判断です。
▲5五角には角交換後、△9三桂として桂馬を攻めに使いにいきます。
(上図からの指し手)
▲2二角 △8五桂 ▲1一角成 △9六歩 ▲同 歩 △9七歩 ▲同 香 △同桂成 ▲同 桂 △9六飛(下図)
▲2二角は1一の香を確実に取りに行く手段ですが、反面その後に馬があまり働きません。
ここは「駒の損得よりも駒の効率」という考えに沿って、△9六歩から集中的に端を攻めていくのが厳しいのです。
(上図からの指し手)
▲9八歩 △8四香 ▲7九桂 △8七香不成▲同 桂 △8六飛(下図)
▲9八歩には視点を変えて△8四香として8七の地点を狙います。
▲7九桂にも構わず△8七香不成と突っ込みました。もし▲同銀ならば△7七角▲8八香△8七銀成▲同桂△8六銀(参考図)としておけば先手玉は受けなしとなります。
本譜は▲同桂と取りましたが、△8六飛として次に△8七銀成を狙います。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7八金 △9六歩 ▲6八金右 △9七歩成 ▲同 歩 △8五桂(下図)
先手は△8七銀成を受けるために▲7八金としましたが、後手は飛車を8六に寄ったことにより9六に歩を打つスペースができていました。よってすかさず△9六歩と打つのが厳しい攻めです。
そして攻めの手を緩めずに△8五桂として9七の地点を狙いました。
(上図からの指し手)
▲9八香 △6五角 ▲9五香 △9七桂成 ▲7七金右 △同銀不成 ▲同 金 △8七成桂(下図)
先手は▲9八香と受けましたが、△6五角が決め手に近い一手でした。
△6五角に対して▲8九香とすると以下△9七香成▲同銀△同桂成▲同香△8七銀成▲同香△同角成▲同金△同飛成(参考図)と進んで、先手玉に必死がかかり後手の勝ちとなります。
本譜は△6五角に対して▲9五香としました。これには△同香▲同桂に△8七香としても後手の勝ち筋でしたが、本譜は△9七桂成から寄せに入りました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲同 銀 △同飛成 ▲同 金 △同角成▲5四歩 △7九金 ▲8一飛 △6一銀(投了図)
まで76手で後手の勝ち
先手は自陣に受けがなくなったあとに▲8一飛と王手を掛けましたが、ここは手堅く△6一銀と受けておいて後手の勝ち筋です。
本譜は△6一銀で先手の投了となりました。
△8九金打を受けようと①▲8八馬としてきたら以下△8九金打▲同馬△7七馬▲8八馬△8七桂までの詰みがあります。
また②▲8八飛も、以下△同馬▲同玉△7八飛▲9七玉△9六歩▲8六玉△7六金▲8五玉△7五金▲9六玉△9八飛成▲9七銀△8四桂で詰みです。
この将棋の総棋譜は以下から
三間飛車藤井システムの急所【居飛車穴熊を攻略】のまとめ
- 三間飛車藤井システムはトマホークとの併用がオススメです。▲5六歩保留型にはトマホーク、▲5六歩型には三間飛車藤井システムが有効です。
- 先手の動きをみて後手は雁木にするか居玉のまま攻めかかるかを判断します。右銀を前線に繰り出していきましょう。
- 「駒の損得よりも駒の効率」という考えに沿って、1一の香を取らせている間に8~9筋を集中的に攻めていきます。相手に反撃の隙を与えないように休まずに攻め続けましょう。
参考書籍
その他参考棋譜
開始日時:2018/05/20 23:00:01
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+Charlotte_Izoard+gikou2_1c+20180520230006
先手:Charlotte_Izoard
後手:gikou2_1c