はじめに
対振り飛車の人気の対策としては玉を固める作戦が主流でしたが、最近は振り飛車側の工夫が進み、居飛車側が玉を固めるだけでは狙い撃ちされてしまう展開をよく見かけるようになりました。
ノーマル三間飛車で言えばトマホーク(下図)が有名です。
参考記事
参考
ノーマル三間飛車「トマホーク」の破壊力 コンピュータ将棋研究Blog
今回の記事では、「組めれば最強」と言われていた時期もあった金銀4枚でガチガチに固めるビッグ4に対して、振り飛車側が中住まいのバランスの取れた構えから敵陣の隙をつく指し方を見ていきたいと思います。
ビッグ4に中住まいで対抗の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/235972
開始日時:2018/08/27 01:17:31
棋戦:R対局(早指2)
先手:Hefeweizen(3185)
後手:後手
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7八飛 △8四歩 ▲7六歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6六歩(下図)
初手▲7八飛は近年採用率が増加傾向にある初手です。
展開によっては角道を開けたまま駒組みを進めることもできますが、本譜は▲6六歩と角道を止めてオーソドックスな形になりました。
(上図からの指し手)
△6二銀 ▲1六歩 △4二玉 ▲4八玉 △3二玉▲1五歩 △3三角 ▲6八銀(下図)
先手は早めに▲1六歩として相手の動きを打診します。
本局の後手は△1四歩と受けなかったので持久戦志向です。
先手は▲4八玉のままでいったん相手の様子を見ます。
(上図からの指し手)
△2二玉 ▲6七銀 △2四歩 ▲3八銀 △1二香 ▲3六歩(下図)
後手の△2四歩はトマホークを警戒したもので、上図の▲3六歩に代えて▲5六銀には△3二銀▲4五銀に△2三銀(参考図)として受けることができます。
よって先手は▲5六銀とせずに▲3六歩と指しました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△1一玉 ▲3七桂 △2二銀▲7九飛 △3二金 ▲7八金(下図)
先手はここから高美濃囲いにする指し方が一般的ですが、本局ではバランス重視の構えを目指して▲7九飛~▲7八金と指しました。
(上図からの指し手)
△5四歩 ▲5六歩 △5一金 ▲2六歩 △4二角 ▲5八玉(下図)
後手の△4二角に対して先手が▲5八玉と中住まいにしたのが大胆な構想です。
▲5八玉に対して△8六歩とするのは▲同歩△同角▲同角△同飛▲8七歩△8二飛に▲4八金(参考図)として、左右にバランスの良い構えにします。
参考図以下
▲4六歩~▲4七銀、そして▲2九飛として形を整えます。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△5三銀 ▲4八金 △4四銀▲4六歩 △4一金 ▲6八角(下図)
後手は△5三銀▲4八金に対して△4四銀としてさらに玉を固める方針です。
△4四銀では△7四歩として▲2九飛△6四銀から攻めの姿勢を見せる指し方もありますが、以下▲2五歩△同歩▲同桂△2四歩▲1三桂成△同香▲1四歩△同香▲同香△1三歩▲同香成△同桂▲1九香(参考図)と端から殺到して先手優勢となります。
本譜の△4四銀に対しては先手は▲4六歩~▲6八角として相手の様子を見ます。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△3一金寄 ▲4七銀 △2三銀 ▲2九飛 △2二金上 ▲4五歩 △3三銀 ▲3五歩(下図)
▲6八角に対して△8六歩とするのは前述のように角交換後に▲4七銀~▲2九飛としてバランスを保ちます。
本局の後手は△8六歩とはせずに△3一金寄からビッグ4に囲いましたが、これは先手も望むところです。
▲4五歩~▲3五歩としていよいよ開戦です。
(上図からの指し手)
△8六歩▲同 角 △同 角 ▲同 歩 △同 飛 ▲5三角 △8三飛 ▲3四歩 △同銀左 ▲7七桂(下図)
▲3五歩に対して△同歩と取るのは以下▲同角△7二飛▲6八角△8二飛▲3六銀△3四歩▲2五歩△同歩▲同桂△2四銀右▲3三歩(参考図)として先手の攻めが続く格好です。
参考図以下
△同桂▲同桂成に①△同角は▲2五歩、②△同銀は▲3五歩△同歩▲同角△7二飛▲2五桂△2四銀右▲3三歩以下先手の攻めが続きます。
本譜は▲3五歩に対して△8六歩から角交換に出ましたが、角交換後に▲5三角と打つ隙が生じました。
後手は△8三飛と引きましたが、先手は▲3四歩~▲7七桂として駒を活用します。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△4四歩 ▲同 歩 △4六歩▲同 銀 △3六歩 ▲4五桂 △3七角 ▲同 金 △同歩成 ▲3三桂成(下図)
先手の▲7七桂は次に▲8五歩~▲7一角成として以下▲7二馬の飛車狙いがあります。
△9四歩▲8五歩△9三桂には①▲8九飛と回って8筋を逆襲する指し方、②▲2五歩から攻める指し方、どちらでも先手が優勢です。
本譜は△4四歩から後手が暴れてきましたが無理気味の攻めなので、先手は冷静に受けておけば問題ありません。
(上図からの指し手)
△4七金 ▲6八玉 △3三桂 ▲6一角(投了図)
まで71手で先手の勝ち
△4七金▲6八玉の後に△3三桂と自陣に手を戻しましたが、▲6一角が痛打となりました。
△3三桂に代えて△3三金直も▲6一角△8二飛▲8三歩△9二飛▲3五歩で先手の厳しい攻めが続きます。
投了図以下
△4六金▲8三角成△4七とには▲8五桂とするのが自陣の逃げ道を作る冷静な一手です。
この将棋の総棋譜は以下から
堅さよりもバランス重視!ビッグ4に中住まいで対抗のまとめ
本局の後手は序盤はトマホークを警戒して△2四歩としてから居飛車穴熊にしましたが、先手も工夫の駒組みで中住まいから下段飛車の好形を作りました。
後手はその後ビッグ4と呼ばれる一昔前なら「組めれば最強」と言われていた構えにしましたが、先手はこの記事のタイトルにある「堅さよりもバランス重視!」の考えに沿ってバランスの良い陣形から後手の手に乗って敵陣に角を打ち込みました。
その後は、相手の攻めを逆用して角で両取りをかけることに成功し、勝利となりました。
その他参考棋譜
その1
https://shogi.io/kifus/235996
その2
https://shogi.io/kifus/235997