はじめに
横歩取り青野流は現在、横歩取りの先手番でもっとも有力視されている戦型です。
コンピュータ将棋ソフト同士の対局でも青野流は先手番の勝率が高いことで知られています。
参考ツイート
横歩取り青野流のこの局面、2018年初頭から昨日までのfloodgateデータベースだと先手が522勝102敗で驚異の勝率83.7%となっています。ただ、ソフトが搭載している定跡が偏っている面もあり(△2六歩は1局しかない)、現在は人間+コンピュータで色々と模索している状況と言えるかもしれません。 pic.twitter.com/U94UOPV8x6
— 西尾明 (@nishio1979) May 19, 2018
青野流の特徴としては、
- 飛車や角を豪快に切って攻めていく変化が多い。
- 左右の桂馬を中央に使っていく。
- 基本的に駒は前進させて使う。
といったことが挙げられます。
今回の記事ではfloodgateの将棋を題材として、横歩取り青野流の基本の形(△2二銀・△8二飛型)について検討していきます。
横歩取り青野流の基本!(△2二銀・△8二飛型)の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
開始日時:2018/12/30 14:30:00
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+utatane+MMF+20181230143000
先手:utatane
後手:MMF
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲2五歩 △3四歩 ▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩▲同 歩 △同 飛▲3四飛(下図)
先手が15手目に▲3四飛と横歩を取り、戦型は横歩取りになりました。
(上図からの指し手)
△3三角 ▲5八玉 △2二銀 ▲3六歩 △8二飛(下図)
後手の△3三角に対して▲5八玉と上がるのが青野流と呼ばれる指し方です。
基本的には先手の飛車は3四に居座ったまま戦います。
▲5八玉では従来の主流であった▲3六飛や勇気流と呼ばれる▲6八玉も有力ですが、この中では青野流が一番人気となっています。
先手が▲5八玉と上がった局面で本局の後手は△2二銀と上がりました。
ここでは△2二銀以外にも△5二玉、△6二玉、△4二銀などが考えられます。
以下、floodgate2018年の青野流の次の一手データです。(17手目▲5八玉に対する次の一手)
本局の後手は▲5八玉に対して△2二銀と上がり、▲3六歩には△8二飛と飛車を引きあげました。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3七桂 △8八角成 ▲同 銀 △3三銀▲8三歩 △同 飛 ▲8四歩(下図)
先手は▲3七桂と跳ねて攻撃態勢を整えます。
▲3七桂は何気ないように見えて、後手の指し手によっては一気に必勝態勢にまで持っていけます。
例えば▲3七桂に対して△5二玉とするのは大悪手で、以下▲8三歩△同飛▲8四歩△8二飛▲4五桂(参考図)と進むと、後手は角を助ける手段がなくなっています。
この時、△5二玉と上がったのが悪手になっています。
よって後手は△5二玉と上がらずに△8八角成と角交換をしました。
以下、▲同銀△3三銀のタイミングで先手は▲8三歩~▲8四歩と後手の飛車に対して歩を連打します。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△8二飛 ▲3五飛 △8四飛 ▲6六角 △6四飛 ▲7七桂(下図)
後手に△8二飛と引かせてから先手は▲3五飛と飛車を引いておきます。
後手は△8四飛としてきますが、そこで▲6六角が後手の飛車取りかつ、3三の地点に利かせた好位置の角です。
そして△6四飛に対して▲7七桂が青野流で頻繁に出てくる左桂の活用です。
青野流の理想は左右の桂馬を中央に跳ねて5三の地点を狙っていくことにあります。
(上図からの指し手)
△3四歩 ▲8五飛 △8四歩▲2五飛 △2四歩 ▲6五飛(下図)
後手は△3四歩から先手の飛車を追いかけますが、先手は飛車を左右に使って後手に歩を打たせます。
相手に歩を打たせることによって将来歩を打てる筋を無くしているのが大きいのです。
そしてガチャンと▲6五飛として飛車をぶつけました。
(上図からの指し手)
△5四角 ▲3三角成 △同 桂 ▲6四飛 △同 歩 ▲2一飛 △6二玉 ▲1一飛成(下図)
▲6五飛と飛車をぶつけた手に対して△同飛と取るのは以下、▲同桂△5二玉▲4五桂(参考図)と進んで青野流大成功となります。
よって本譜は▲6五飛に対して△5四角としましたが、▲3三角成から進んで敵陣に龍を作って先手有利です。
以下は先手が有利を継続して、139手までで先手の勝ちとなりました。
- 玉は▲5八玉が定位置。居玉を避けることにより、王手飛車が掛かりにくい。
- 飛車は3四に置いたまま▲3六歩から▲3七桂と駒を使う。チャンスがあれば▲4五桂と跳ねる。
- ▲7七桂として左桂も活用できればなおよい。6五と4五に桂馬を跳ねて5三を狙うのが厳しい狙いです。
この将棋の総棋譜は以下から
横歩取り青野流の基本!(△2二銀・△8二飛型)のまとめ
横歩取り青野流はコンピュータ将棋ソフトの間でも有力視されており、現在のソフトは定跡を登録していなくても青野流を目指すようになっています。
その攻撃力の高さが一番の魅力で、自陣は▲5八玉と上がった後は▲3八銀の一手で引き締まります。
よってコンパクトで手数が掛からないながらもある程度の耐久性があり、攻撃に専念できるのです。
相手の駒組みに少しでも隙があれば▲4五桂と跳ねて相手の角と中央を狙っていきましょう。
参考書籍
横歩取り青野流に特化した戦術書です。
藤森五段の親しみやすい文体はとてもわかりやすく、オススメの一冊です。