対矢倉の中住まいバランス型

はじめに

先手矢倉は全盛期ほどは指されていないものの、最近では少しずつ採用されることが増えてきました

5手目に▲7七銀と上がる矢倉は昔から指され続けていたものの、定跡としては序盤から分岐が広いのでまだまだ体系化されているとは言えない状況です。

今回の記事では5手目▲7七銀からの矢倉に対して、後手が中住まいのバランスの取れた布陣で対抗する将棋を見ていきます。

対矢倉の中住まいバランス型の実戦例

開始日時:2018/12/16 13:23:13
棋戦:R対局(早指)
先手:先手
後手:JKishi18gou(3228)

(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △5二玉

先手番で矢倉を目指すなら初手は▲7六歩が普通です。5手目▲7七銀まではよくある進行ですが、6手目の△5二玉があまり見ない一手でした。

(上図からの指し手)
▲7八金 △7四歩 ▲4八銀 △7三桂 ▲5八金 △8五歩

後手は△7四歩~△7三桂~△8五歩と仕掛けの準備をします。

△5二玉と上がっているのでのちに王手飛車のラインに入りにくくなっています。

(上図からの指し手)
▲6六歩 △6四歩 ▲6七金右 △3二金

△8五歩の局面で▲2六歩は△6五桂(参考図)と跳ねられるのが少し気になります。

△6五桂以下①▲6八銀とすると△8六歩▲同歩△8八角成▲同金△8六飛▲8七歩△7六飛▲7三角△4四角▲6六歩△同飛▲7七桂△7五歩(手順最終手)と進んで後手が指しやすい形勢です。

また、△6五桂に②▲6六銀も△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△7六飛▲6八金右△6四歩(手順最終手)と進んで、後手まずまずの仕掛けです。

本譜は△8五歩に対して△6五桂の仕掛けを封じるために▲6六歩としました。

そうされると後手もすぐには攻め切れないので駒組みに移ります。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
▲5六歩 △6二金 ▲7九角 △7二銀 ▲4六角 △6三銀

先手は矢倉囲いの骨格を作った後に▲4六角としました。後手も6四の歩を助ける意味で△6三銀と上がっておきます。

(上図からの指し手)
▲5七銀 △4二銀▲6九玉 △8一飛 ▲7九玉 △3三銀 ▲3六歩 △4四銀

先手は金銀4枚の矢倉城を完成させました。それに対して後手は4六の角を狙って△4四銀と上がりました。

(上図からの指し手)
▲3七桂 △5四歩 ▲2六歩 △3三桂 ▲8八玉 △4五桂

△4四銀は次に△4五銀を狙っています。よって先手は▲3七桂と跳ねてそれを防ぎますが、後手は△3三桂~△4五桂としてやはり4五の地点から攻めていきました。

(上図からの指し手)
▲6八銀右 △3七桂不成▲同 角 △4五銀 ▲2五歩 △3六銀 ▲2六角 △3五桂

本局の後手の狙いは先手の角を狙いつつ盤面全体で抑え込みを狙うことにあります。

上図からの手順最終手の△3五桂もその考えに沿った指し手で、銀と桂馬で先手陣を圧迫していきます。

(上図からの指し手)
▲2四歩 △同 歩 ▲3五角 △同 歩▲2四飛 △3三角 ▲3四飛 △4五角 ▲3五飛 △3四歩

△3五桂は次に△2七銀成の飛角両取りが厳しい狙いです。△2七銀成を防いで▲3九桂とすると以下、△8六歩▲同銀△6五歩▲7七銀引△8六歩▲同歩△6六歩▲同銀△8五歩▲同歩△同桂▲8六歩△6五歩(手順最終手)と進んで後手の攻めがつながります。

ポイント
▲7七銀引には△同桂成▲同銀に△3七銀打が痛打となります。

本譜は△3五桂に対して▲2四歩~▲3五角と攻めていきましたが、少し無理気味の攻めです。

後手は落ち着いて対処すれば優位を保てます。

(本譜局面図再掲)

(上図からの指し手)
▲4五飛 △同 銀 ▲2五桂 △2四角 ▲3三歩 △2二金▲2三歩 △2一金 ▲1六桂 △3五角 ▲2四角 △3八飛

先手陣は金銀4枚の強固な構えですが、反面攻め味に乏しく苦しい形勢です。

後手は慌てて攻める必要がない局面なので先手の攻めをひとつひとつ丁寧に受けていきます。

そして△3八飛は攻防に利く好手でした。

(上図からの指し手)
▲3二歩成 △同 金 ▲3三桂成 △2四角 ▲同 桂 △3三金▲2二歩成 △2四金 ▲1一と △9四桂

その後も後手は先手の攻めを丁寧に受けていきます。先手の攻めが一息ついたのをみて、ついに△9四桂として攻めの足掛かりを作りました。

(上図からの指し手)
▲3三角 △2三金 ▲1五角成 △9五桂

△9四桂に続いて△9五桂として寄せの準備が完了しました。

次に△8六歩▲同歩△8七歩の攻めが厳しいです。

(上図からの指し手)
▲9六歩 △8七桂成 ▲同 玉 △8六歩▲8八玉 △6九角 ▲7九桂 △5六銀 ▲同 金 △6八飛成 ▲同 銀 △8七銀

まで92手で後手の勝ち

先手は△8六歩と指される前に▲9六歩としましたが、今度は△8七桂成~△8六歩とする手がありました。

以下は△6九角が急所の一手で、△5六銀という決め手も飛び出して後手の勝ちとなりました。

投了図以下
▲同金、▲同桂は△同歩成以下、▲9七玉は△8五桂、▲7七玉も△7八角成までの即詰みです。

この将棋の棋譜は以下から

対矢倉の中住まいバランス型のまとめ

  • 先手矢倉に対して序盤早々に△5二玉としたのが工夫です。展開によっては△6五桂からの攻めを狙います。
  • 後手は先手の4六の角を狙って駒組みを進めていきます。盤上全体での抑え込みが狙いとなります。
  • 先手の攻めを丁寧に受けた後は△9四桂、△9五桂と2枚の桂を使って先手の矢倉城を攻略しました。

その他参考棋譜

その1

その2

その3

参考書籍

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