はじめに
プロ間でも大流行を巻き起こした「矢倉左美濃急戦」。
その多様性のある指し筋と左美濃の堅い囲いを生かした攻めで公式戦でも高勝率をマークしました。
今回の記事ではその「矢倉左美濃急戦」の基本に立ち戻ってその指し方をおさらいしていこうと思います。
実戦例
動く将棋盤は↓のリンクから
https://shogi.io/kifus/76984
開始日時:2017/04/02 10:30:01
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+gps_l+ukamuse_1800X_4.0GHz+20170402103004
先手:gps_l
後手:ukamuse_1800X_4.0GHz
(初期局面)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △8五歩 ▲7七銀 △4二玉 ▲4八銀 △6四歩 ▲7八金 △6三銀(下図)
矢倉左美濃急戦は先手が5手目に▲6六歩と指し、その後▲7七銀から矢倉を目指してきた時に有力となる戦法です。
まずは△4二玉と上がり、△6四歩~△6三銀と指して銀を攻めに使う姿勢を見せます。
(上図からの指し手)
▲5八金△5四銀 ▲2六歩 △3二銀 ▲6九玉 △3一玉 ▲6七金右 △7四歩 ▲2五歩 △7三桂(下図)
後手は腰掛け銀にしてから左美濃に組み上げました。
▲2五歩と先手が飛車先の歩交換を狙ってきた時に、△3三角と上がらずに△7三桂と指して攻撃の姿勢を見せます。
ここで△3三角と上がると、以下▲9六歩 △5二金右 ▲3六歩 △7三桂 ▲3七銀 △4四歩 ▲2六銀 △4五歩 ▲3五歩(参考図)
と進み、後手は角頭を狙われるのが少し気になる変化です。
このような変化を避けるために、飛車先の歩交換を受けずに△7三桂
(局面図再掲)
と指したのです。
(上図からの指し手)
▲7九角 △6二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △6五歩▲同 歩 △2三歩 ▲4六角 △8一飛(下図)
先手は▲7九角から▲2四歩と2筋の歩を交換し、▲4六角と相手の飛車に狙いをつけました。
この戦型ではよく出てくる牽制の手段です。
それに対して後手は△6二金・△8一飛型に構えました。
△7三桂に金でヒモを付けつつ、△8一飛と相手の角筋から避けるのが最新の有力な構えなのです。
(上図からの指し手)
▲6四歩 △7五歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7六歩 ▲同 金 △6五桂(下図)
先手は▲6四歩と相手の攻めの焦点をずらそうとしました。
▲6四歩に代えて▲6六銀と指すと、以下△6五銀 ▲5七銀上 △3三桂 ▲6五銀 △同 桂 ▲6八銀 △4五桂 ▲6六歩 △5七銀(参考図)という
囲い側の桂馬を攻めに参加させる筋があり、後手が有利となります。
このような攻め筋が生じるのも序盤で△3三角と上がらなかった効果です。
本譜、後手は△7五歩~△7六歩~△6五桂と攻めを継続してきました。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲6六銀 △8六歩 ▲6三歩成△2三歩 ▲2八飛 △6三金(下図)
先手は△6五桂に対して▲6六銀と指しましたが、代えて▲同金の場合はいったん△2三歩と収めておくのがよいでしょう。本譜も▲6三歩成に対して一回△2三歩と受けてから△6三金と手を戻しました。
後手の攻め駒が躍動しており、自陣も堅いので優勢は揺るぎません。
(上図からの指し手)
▲2四歩 △同 歩 ▲5五歩 △8七歩成 ▲5四歩 △7八と ▲同 玉 △5六金(下図)
先手はすでに受けが難しい局面になっています。
▲5五歩には当然構わず、△8七歩成と指します。
以下、△5六金と張り付いた局面は後手勝勢です。
(上図からの指し手)
▲2三歩 △同 銀 ▲6七銀 △8九飛成▲同 玉 △6七金(下図)
形勢に差があることもあり、後手にはいろいろな勝ち方があります。
▲6七銀に対して△8九飛成が豪快な決め手。
飛車を渡しても後手玉は安全なうえ、玉を下段に落とすのが最短の寄せとなります。
(上図からの指し手)
▲5九銀 △8七銀 ▲8八歩 △6六角 ▲3三飛 △同 桂 ▲8七歩 △8八歩(下図)
まで70手で後手の勝ち
▲5九銀と飛車の横利きを通しましたが、△8七銀と玉頭を押さえ込み△6六角で必死が掛かりました。
(以下▲8七歩なら△8八銀 ▲同 飛 △同角成 ▲同 玉 △7八飛 ▲8九玉 △7七桂打 ▲同 金 △同桂不成で詰み)
後手の△6二金・△8一飛の最新型の構えからの鋭い攻めが決まった1局でした。
まとめ
・5手目▲6六歩からの先手矢倉には後手は左美濃急戦が有力です。
△2二角のにらみと△6五歩からの攻めが強力なコンボとなります。
・△6二金・△8一飛が最新型の構え。
桂馬にヒモを付けつつ、角筋を避けた△8一飛のバランスがよいのです。
・攻めの構えが完成したら6、7、8筋からガンガン攻めていこう。
飛車の打ち込みに強い形の左美濃は飛車を切る攻めも成功しやすい。
終盤の玉を下段に落とす寄せの基本もこの実戦から学ぼう。
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/76998
開始日時:2017/03/25 18:30:02
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+gps_l+clairvoyancer+20170325183002
先手:gps_l
後手:clairvoyancer
以下▲6五金には△7六歩 ▲8八銀 △8六飛 ▲8七歩 △8五飛で後手有利。
参考書籍