はじめに
前回の記事では角交換をしない形の右玉を紹介しました。
右玉にはさまざまな種類の作戦があり、角交換型でも力を発揮します。
今回の記事では△4三銀・角交換型右玉の将棋を紹介したいと思います。
その指しこなすコツを理解していただけたらと思います。
実戦例
実戦例その1
動く将棋盤は↓のリンクから
https://shogi.io/kifus/76173
開始日時:2017/05/27 10:00:03
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+gps_l+Usa2dash_20+20170527100009
先手:gps_l
後手:Usa2dash_20
(初期局面)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △5四歩 ▲4八銀 △4二銀 ▲5八金右 △6四歩 ▲7八金 △6三銀(途中図)
▲6九玉△7四歩 ▲6七金右 △4四歩 ▲7七銀 △3二金 ▲7九角 △4三銀 ▲2六歩 △9四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲3六歩 △9五歩 ▲3七銀 △7三桂▲2四歩(下図)
矢倉模様の出だしから後手が△6四歩から変化。そしてツノ銀の形にしました。
先手は矢倉城を構築してから▲2四歩と角交換を目指します。
ここで後手は△9五歩と端の位を序盤で取ったのがポイント。
端の位がとれたのでここから次の作戦を選びました。
(上図からの指し手)
△同 角 ▲同 角 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △5二金 ▲7九玉 △6二玉(下図)
後手は△6二玉と上がり、右玉を選択しました。
△4三銀・角交換型の右玉は金銀の連結がよくバランスがよい構えです。
後手のポイントとして△9五歩と端の位を取れているので玉の可動域が広いことと、△8四歩型なので将来△8五桂と反撃する筋があるという2点が挙げられます。
まずは後手作戦勝ちの序盤戦といったところでしょう。
(上図からの指し手)
▲8八玉 △8一飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛△3三桂 ▲2八飛 △2七歩 ▲同 飛 △3八角(下図)
▲8八玉の入城には△8一飛と引いておいて右玉の基本形は完成です。
次の▲2四歩△同歩▲同飛の動きは先手からの次の狙いにとぼしく疑問手でした。
ここで△2三歩と打たずに△3三桂が好着想です。
仕方ない▲2八飛にも△2七歩の手裏剣が飛んできました。
ここで▲5八飛と指すと△4五桂▲4六銀△6九角▲4八飛△2八歩成▲同飛△4七角成(参考図)
と馬を作って後手優勢となります。
本譜も▲同飛に対して△3八角と打ち込み、馬を作れそうになりました。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2八飛 △4七角成 ▲4六歩 △3五歩 ▲2三角 △4二金左 ▲3五歩 △3六歩(下図)
仕方のない▲2八飛に対して△4七角成と馬を作ることに成功して後手優勢です。
次に△4五桂があるので先手は▲4六歩と打ちましたが、△3五歩から手を緩めずにいきます。
▲2三角は勝負手ですが、相手にはせず△4二金左と指しておくのが手堅い指し手。
△3六歩と銀取りに歩を打った上図の局面は銀を逃げると△4六馬があり、後手の優勢は揺るぎないものとなりました。
※以下の手順は↓から鑑賞してください。
実戦例その2
動く将棋盤は↓のリンクから
https://shogi.io/kifus/76200
開始日時:2017/05/22 22:00:04
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+gps_l+Yanelmo_PvSeoTsume_i5-3317U+20170522220006
先手:gps_l
後手:Yanelmo_PvSeoTsume_i5-3317U
(初期局面)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △3二金 ▲2六歩 △3四歩 ▲7八金 △3三角 ▲同角成 △同 金(途中図)
▲4八銀 △4四歩 ▲8八銀 △7二銀 ▲4六歩 △6四歩 ▲4七銀△7四歩 ▲6八玉 △7三桂 ▲7七銀 △8一飛 ▲1六歩 △5二金 ▲1五歩 △6二玉(下図)
後手の趣向で△3三金型の角換わりの将棋になりました。
このあと、△2二飛から力戦振り飛車にする構想も考えられたところです。
本譜は△6三銀と上る前に△6二玉と指し、早々と右玉を宣言しました。
(上図からの指し手)
▲9六歩 △9四歩 ▲5八金 △6三銀 ▲3六歩 △3二金▲6六歩 △4二銀 ▲7九玉 △4三銀 ▲3七桂 △3三桂
(下図)
先手はオーソドックスな駒組みを進めています。
対して後手は3三の金を3二に引き形を再度整えます。
そうして組み上がってみると△4三銀・角交換型右玉に落ち着きました。
(上図からの指し手)
▲2五歩 △5四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2九飛 △2一飛(下図)
先手は2筋の歩を伸ばしていき飛車先の歩交換をしましたが、後手の△2一飛が狙いの構想です。
△4三銀・角交換型右玉では常に狙い筋としてある指し方なので覚えておきましょう。
(上図からの指し手)
▲8八玉△2四歩 ▲6七金右 △2五歩 ▲5六歩 △2六歩(下図)
先手は▲8八玉と入場しましたが、ここでは悔しいようですが▲2五歩と打っておくのが有力でした。
以下、△7二玉 ▲8八玉 △8二玉 ▲5六歩 △6二金 ▲6八銀 △5二銀左 ▲7七桂 △7二金(参考図)
のような手順が考えられ1局の将棋です。
本譜は▲2五歩と打たなかったため、後手は△2四歩~△2六歩とずんずん飛車先の歩を伸ばし先手の動きを逆用していきました。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2五歩 △同 桂 ▲2六飛 △2四歩 ▲2五桂 △同 歩 ▲2九飛 △3七角(下図)
先手の▲2五歩△同桂▲2六飛の切り返しには△2四歩とあせらずに支えておくのがしっかりした指し方です。
▲2五桂△同歩▲2九飛には△3七角とやはり馬を作りにいくのが手堅い指し手。
その1の実戦例でもありましたが、右玉は自陣は固くないもののバランス感覚に優れており、隙きのない構えが魅力的な作戦です。
よって馬を作ってじっくりと圧迫していく指し方と相性がいいのです。
(上図からの指し手)
▲5五歩 △4八角成▲5六銀 △5五歩 ▲2二歩 △8一飛 ▲5五銀 △5四歩 ▲2五飛 △5五歩 ▲2一歩成 △6九銀 (途中図)
▲6八金寄 △5八銀不成▲2二と △4二金左 ▲5八金△同 馬 ▲6八金 △3六馬
(下図)
馬を作ったその後、後手は相手の攻め駒を責める方針です。
▲2二歩に対する△8一飛や、▲2二とに対する△4二金左は覚えておきたい右玉の感覚。
軽く受け流すような指し方で、馬が作れていることや駒得を考慮すれば俄然後手が優勢です。
△6九銀から相手の囲いを1枚剥がし、△3六馬と飛車取りに引きつけて後手勝勢となりました。
※以下の手順は↓から鑑賞してください。
まとめ
・△4三銀・角交換型右玉はバランスの良さが特徴です。相手の2筋交換には反撃の筋を考えましょう。
・反撃のパターンは①△2七歩からの馬作り②△2一飛からの飛車先逆襲が主なものとなります。相手陣に少しでも隙きがないかよく確かめましょう。
・相手の勝負手や反撃には軽く受け流す指し方が有力です。馬を作ったならばじっくりと圧迫し、相手の攻め駒を責める感覚がよいでしょう。
参考書籍