はじめに
右玉戦法は受け身な戦法と思われがちですが、相手の駒組みによっては積極的にみずから攻めていくことができる戦法です。
今回の記事では矢倉に対して右玉が速攻を仕掛けた将棋をみていきたいと思います。
実戦例
動く将棋盤は↓のリンクから
https://shogi.io/kifus/75764
開始日時:2014/06/24 03:30:01
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+gpsfish_XeonX5680_12c+gps_l+20140624033003
先手:gpsfish_XeonX5680_12c
後手:gps_l
(初期局面)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲7八金 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △6二銀 ▲2六歩 △4四歩 ▲4六歩 △5四歩 ▲6六歩(下図)
互いに角道を止める、定跡形とは異なる将棋になりました。
ここからはさまざまな構想が考えられるところです。
(上図からの指し手)
△5二金右 ▲4八銀△3二銀 ▲4七銀 △4三金 ▲1六歩 △3一角 ▲6七銀 △7四歩 ▲5八金(下図)
後手は高美濃の形を作ってから引き角に、先手はまだ左に玉を持っていくか右に玉を持っていくかの態度を保留しています。
(上図からの指し手)
△7三銀 ▲3六歩 △3三銀 ▲4八玉 △4二玉 ▲3七桂 △3二玉▲2九飛(下図)
先手は右玉を選択しました。それに対して後手は先手が右玉にするのを見届けてから早囲いにしました。
上図の▲2九飛で下段飛車にして右玉の基本形が完成。
ここから相手の指し手をみつつ作戦を決めていきます。
(上図からの指し手)
△1四歩 ▲2五歩 △2二玉(下図)
後手は△2二玉とさらに深く囲おうとしましたがこれはやや危険な意味合いがありました。
先手の7七の角が間接的に後手玉のラインに入ったからです。
ここでは△3二玉型のまま、△6四銀~△7五歩と攻めていく順も有力でした。
これを見て攻める右玉が発動します。
(上図からの指し手)
▲4五歩 △同 歩 ▲6五歩(下図)
まず▲4五歩から開戦。そして相手玉のラインを開けてから▲6五歩と角筋を通します。
ここで△8六歩▲同歩△同角と角交換を目指してきたならば、▲6六角と上がっておいて角筋のラインは保持しておくのがよいでしょう。
(上図からの指し手)
△4二角 ▲3五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲4四歩(下図)
後手は△4二角と上がりましたがこれはやや危険でした。
ここでは△3二金と上がっておいたほうがよかったでしょう。
先手は△4二角をみて、▲3五歩△同歩と味付けをしてから▲2四歩△同歩▲同飛と攻め込みます。
仕方のない△2三歩にも攻めの手を緩めず、▲4四歩とくさびを打ち込んで先手有利となりました。
(上図からの指し手)
△同 金 ▲同 飛 △同 銀 ▲同 角 △3三角 ▲同角成 △同 桂 ▲8八角(下図)
きれいな十字飛車が決まり、攻める右玉が炸裂しました。
なおも先手は▲8八角と設置し、角のラインでの攻めを継続します。
(上図からの指し手)
△5五角 ▲同 角 △同 歩 ▲4四角 △2八飛 ▲5九玉 △2六角▲3八金 △2九飛成 ▲6八玉(下図)
△5五角にも角交換をし再度▲4四角と設置。
本局の攻めの方針は角のラインで攻めることなので方針を一貫させています。
△2八飛からの反撃には柳に風と▲6八玉から左辺に逃げ込みます。
玉を自在に動かしてフットワークよく指しこなすのが右玉のコツとなります。
(上図からの指し手)
△3六歩 ▲2六角 △同 龍 ▲4五桂 △2五龍 ▲3三桂成 △同 玉 ▲7一角(下図)
△3六歩に対して▲2六角△同龍▲4五桂が気持ちのいい桂馬の跳躍。
△同桂と取ると▲4四角が王手龍取りとなります。
よって後手は△2五龍と辛抱しましたが、以下進み上図▲7一角で先手大優勢です。
(上図からの指し手)
△4二飛 ▲2六銀 △2四龍 ▲3五角成△6二角 ▲3四歩 △同 龍 ▲2五桂(下図)
後手は懸命に粘ろうとしますが、先手の指し手は正確です。
△6二角に対して▲3四歩△同龍▲2五桂が3手1組の決め手。
ここで△同龍ならば▲同馬と取っておけばOKです。
(上図からの指し手)
△4三玉 ▲3四馬 △同 玉 ▲3三飛 △2四玉 ▲6三飛成 △2一桂 ▲5四龍(下図)
先手玉は安泰なのであとは攻め方さえ間違わなければ先手が勝てる将棋です。
▲3三飛から▲6三飛成と龍を作り詰めろをかけます。(▲3三龍まで)
よって後手は△2一桂と受けましたが、▲5四龍でゴールはもうすぐです。
(上図からの指し手)
△4四飛 ▲5五龍 △4七飛成▲同金右 △2六角 ▲3六金(下図)
後手の△4四飛には▲5五龍とあせらずに丁寧に指しておきます。
△4七飛成にも▲同金右~▲3六金と相手玉の包囲網を確実に狭めていくのがいい指し方です。
(上図からの指し手)
△9五角 ▲7九玉 △3五銀 ▲2六金 △同 銀 ▲4三角 △3三歩 ▲4四飛 △3四金 ▲3三桂成(途中図)
△8八銀 ▲同 玉△7七角成 ▲同 桂 △3三玉 ▲3四角成(下図)
まで109手で先手の勝ち
先手は正確な攻めを続け、▲3三桂成で必死をかけることに成功しました。
本局を振り返ってみると先手の角筋を活かした攻めが強烈でした。
右玉は受け重視のカウンター狙いだけではない戦法だとわかっていただけたかと思います。
まとめ
・相手の玉が角のラインに間接的に入ったときにはチャンス到来!攻めに方針を切り替えよう。
・十字飛車が強烈な攻め筋。角のラインは保持して攻めを続けよう。
・自陣が安泰な場合は攻めさえ繋がれば大丈夫。丁寧に攻めを続けていこう。