はじめに
プロ間でもこの半年の間で流行が続いている雁木戦法。
雁木を得意とする棋士はたくさんいますが、採用が目立っているのは深浦九段、稲葉陽八段、増田康宏四段などです。
深浦九段はA級順位戦でも雁木を採用し好成績を上げています。
また、増田康宏四段(現六段)は新人王戦にて雁木を連採し勝ち進み、2期連続の決勝三番勝負進出を決めています。
今後もプロ棋界での雁木の動向に注目していきたいです。
今回の記事では、雁木の攻め方のコツを対矢倉△7三銀型を相手として見ていきたいと思います。
実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/85432
棋戦:将棋ウォーズ(10秒将棋)
先手:2016Pona 後手:後手
(初期局面)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲7八金 △3二金 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲6七銀(下図)
少し変わった出だしの序盤です。
3手目に▲7八金と上がり角換わりか?と思わせて、5手目▲6八銀、7手目▲6六歩で矢倉模様にみえます。
しかし、9手目に▲6七銀と上がり、ここで矢倉を選択しないことを明らかにしました。
まだ先手は振り飛車の可能性もありますが、雁木を視野に入れた駒組みです。
(上図からの指し手)
△4二銀 ▲2六歩 △5四歩 ▲5八金 △3三銀 ▲5六歩△3一角 ▲6九玉(下図)
やはり先手の作戦は雁木でした。
右銀の動きは保留しつつ駒組みを進めていきます。
(上図からの指し手)
△8五歩 ▲4八銀 △4一玉 ▲7七角 △7四歩 ▲3六歩 △7三銀 ▲3七桂 △5二金 ▲2五歩(下図)
先手の雁木に対して後手は矢倉△7三銀型で対抗しました。
この△7三銀型は先手の▲7七角を狙っていく指し方で雁木に対するひとつの有力策です。
先手は後手の速攻に対応できるように▲3六歩~▲3七桂と反撃の体制をみせます。
仮に上図の局面から△7五歩▲同歩△8四銀のように攻めてきた場合は以下、▲7四歩 △7二飛 ▲6八角 △7四飛 ▲4六角 △7三桂 ▲7二歩(参考図)
のように対応することができます。
この変化は先手が▲4六歩と突いていないため、▲4六角と出る余地があり先手有望な変化です。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△4四歩 ▲4六歩 △4三金右▲4五歩(下図)
△4四歩▲4六歩に対して△7五歩▲同歩△同角と動いてくる指し方には、▲2四歩(参考図)
が機敏な動きとなります。
以下、△同歩なら▲2五歩から十字飛車を狙います。
また、△同銀なら▲6五歩と突いて次に▲4四角からの攻めを狙って先手模様よしです。
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/85761
棋戦:将棋ウォーズ(10秒将棋)
先手:2016Pona 後手:後手
本譜は△4三金右に対して▲4五歩と先手から仕掛けていきました。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△同 歩 ▲6五歩 △6四歩 ▲4五桂 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2七飛(下図)
▲6五歩と角道を通してから▲4五桂と跳ね、▲2四歩から飛車先の歩を交換しました。
自然な攻めの流れです。
そして△2三歩に対して▲2七飛と3段目に引いたのが面白い着想でした。
ここは▲2九飛も考えられたところで、以下△6五歩 ▲3五歩 △2二角 ▲4七銀 △6四銀 ▲4六銀(参考図)
のような展開が一例です。
こちらの指し方も有力でした。
本譜は▲2七飛と3段目に引くことで飛車の横利きを効かせようということです。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△6五歩 ▲5七銀 △6四銀 ▲3五歩△7五歩 ▲3四歩(下図)
後手は7筋、先手は3筋を攻めていく展開になりました。
4五の桂馬を主軸として攻めていくために、▲3五歩~▲3四歩と攻めていくのは筋のよい指し方です。
(上図からの指し手)
△8六歩 ▲同 歩 △7六歩 ▲同 銀 △8八歩 ▲3三桂不成△同 桂 ▲同歩成 △同金寄 ▲2五桂(下図)
ここからは攻め合いになります。
後手の△8八歩に対して手を抜いて▲3三桂不成と攻めていきました。
ここで▲8八同金などと相手をすると、△5五歩と突かれて局面が紛れてしまうので注意が必要です。
(上図からの指し手)
△3四金 ▲3五歩 △4五金▲3四歩 △6六桂 ▲同 銀 △同 歩 ▲3三歩成(下図)
先手はやはり後手陣の急所である3筋を狙って攻めていきます。
▲3三歩成となって先手好調。
もうひと息です。
(上図からの指し手)
△同 銀 ▲同桂成 △同 金 ▲3四歩 △3二金 ▲7四桂(下図)
先手は3筋で戦果を上げた次に▲7四桂と飛車を狙っていきました。
これは左右からのはさみ撃ちを狙った寄せの基本となる指し方です。
いよいよゴールが近づいてきました。
(上図からの指し手)
△8三飛 ▲6六角 △5五歩 ▲6二桂成(下図)
本譜、後手は飛車取りに対して△8三飛と指しました。
ここで△7二飛と指してきた場合には以下、▲6六角△5五歩▲3三銀のように攻めるのがいいでしょう。
△8三飛と3段目に効かせてきましたが、▲6六角△5五歩を決めてから今度は▲6二桂成と指す手が生じました。
(上図からの指し手)
△4六桂 ▲5七金 △8九歩成 ▲4六金 △同 金 ▲4四桂 △4二玉 ▲5四銀(下図)
まで83手で先手の勝ち
後手も△4六桂から懸命に反撃しようとします。
しかし先手はその桂馬を▲5七金~▲4六金と取りにいったのが好着想でした。
そして取った桂馬を▲4四桂と打ちいよいよ後手は受けに窮してきました。
以下、△4二玉に▲5四銀と玉の逃げ道を封鎖したところで後手の投了となりました。
投了図以下は、△4一銀と受けるくらいですが▲3二桂成 △同 玉 ▲3三金 △2一玉 ▲2二歩 △同 角 ▲2三飛成(参考図)
と進んで寄り形となります。
先手が雁木からうまく攻めを繋いだ一局でした。
まとめ
・雁木に対する矢倉△7三銀型は有力な作戦です。
先手も後手から先に攻められてもいいようにいつでも反撃できるように駒組みを進めます。
・▲4五桂と跳ねた後は後手陣の急所である3筋を集中して攻めていきます。
また、△8八歩のような小技には相手をするか手抜くかという状況に応じた対処が求められます。
・寄せの基本のひとつであるはさみ撃ちが本局では現れました。
相手玉の逃げ道を無くしていく指し方を学びましょう。