はじめに
本日8/20はNHK杯、中村(修)-行方戦とJT杯、糸谷-豊島戦がテレビ放送及びネット中継されましたが、両局とも雁木の将棋になりました。
プロ間でもその流行はなお続いているようです。
プロで流行する戦法は
・誘導しやすい
・勝率が高い
・創意工夫しやすい
といった要素が重なることで起こりうると私は考えます。
今後も雁木の流行は続くと思います。
タイトル戦で雁木の将棋を見てみたいものですね。
今回の記事ではツノ銀雁木と菊水矢倉の将棋を題材として中盤の指し方を重点的に見ていきたいと思います。
実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/77268
棋戦:将棋ウォーズ(10秒将棋)
先手:先手 後手:2016Pona
(初期局面)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △3二金 ▲2六歩 △7二銀 ▲5八金右 △8四歩 ▲6六歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6七金 △6四歩 ▲7八金 △6三銀(途中図)
▲4八銀△3三角 ▲5六歩 △4二銀 ▲5七銀 △4四歩 ▲6九玉 △4三銀 ▲3六歩 △5二金 ▲8八銀 △4一玉
(下図)
先手の駒組みは矢倉模様ですが、まだどのように囲うかははっきりしていません。
対する後手は△4一玉と指し、ツノ銀雁木の作戦を選択しました。
(上図からの指し手)
▲7九玉 △5四銀右 ▲5九角 △7四歩▲3七角 △6三金 ▲3八飛 △4五歩 ▲9六歩 △7三桂 ▲7七桂(下図)
先手は3手角から▲7七桂と指し、菊水矢倉を選択しました。
後手からの△6五歩の攻め筋に備えた指し方です。
対する後手は△6三金と攻めに厚みを加えてから、△4五歩と角筋を通し、△7三桂と着実に攻めの体制を整えていきます。
(上図からの指し手)
△1四歩 ▲1六歩 △3一玉 ▲2五歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩△8一飛(下図)
後手が△8六歩から一歩を交換したのに対して先手はおとなしく▲8七歩と受けましたが、ここでは▲8五歩とフタをして勝負する順もありました。
以下、△同 桂▲8七銀△4六歩▲8六銀△4七歩成▲1八飛△7七桂成▲同 銀△4五桂▲6八銀右△3七と▲6一飛△4一歩
(参考図)
と進み、難解な形勢です。後手がこのような順を避けたかったならば、すぐに△8六歩とは突かずに先手が▲8九玉と寄った瞬間に突くと大丈夫です。(▲8七銀の時に△7七桂不成が王手になる)
この順は菊水矢倉の将棋でよく出てくる筋なので覚えておきましょう。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2八飛 △2二玉 ▲8九玉 △9四歩 ▲3八飛 △6二金 ▲6四角 △6五歩(下図)
先手は菊水矢倉を完成させることには成功しましたが、攻めの手掛かりを自分から作るのは難しい将棋になっています。
後手の△6二金は不思議な感覚の1手ですが、先手から動くのが難しいので間合いを計った意味合いがあります。
後手の誘いに乗るような形で▲6四角と一歩を手にしましたが、すかさず△6五歩と合わせの歩で開戦しました。
(上図からの指し手)
▲同 歩 △7五歩 ▲同 角 △6五桂 ▲同 桂 △同 銀▲6六歩 △7四銀 ▲6四角 △9五歩 ▲同 歩 △9六歩
(下図)
中盤の1手1手が難しい局面が続きます。
菊水矢倉に対する攻め方の基本は攻めの桂馬と守りの桂馬を交換することです。
そして手にした桂をうまく攻めに使えるかが焦点となります。
本譜の後手も基本に忠実に指し、桂交換に成功しましたが形勢は互角です。
△9六歩と垂らした局面はまだ後手からの攻めに迫力がないのでここら辺で反撃に転じたいところです。
(上図からの指し手)
▲3五歩 △同 歩 ▲同 飛 △6三金 ▲2八角 △8五桂 ▲9六香 △7七歩(下図)
先手は▲3五歩と反撃に転じます。
△同歩に対して▲同飛と指しましたが、ここでは▲3七桂と右桂の活用を図るのも有力でした。
以下、△6三金▲9一角成△同 飛▲4五桂△4四角▲3三歩△同 桂▲4六香△4五桂▲同 香(参考図)
と進んで難解な形勢です。後手もこのような展開になれば受けも考えないといけない局面が続き大変だったと思います。
本譜は△7七歩が一歩千金で痛打となりました。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲6八金寄△9七桂成 ▲同 銀 △8七飛成 ▲8八銀 △9六龍 ▲7七金寄 △8四香 ▲8七歩 △9七歩(下図)
△7七歩に対して▲6八金寄と指しましたが、△9七桂成が決め手に近い1手となりました。
以下龍を作り、△9七歩と垂らした局面は先手がと金作りを受ける手段がなく後手優勢です。
▲6八金寄では▲同銀と指したほうがまだ先手は粘れたでしょう。
(上図からの指し手)
▲9一角成 △9八歩成 ▲7八玉 △8八と ▲同 玉 △9八銀(途中図)
▲7九桂 △8七香成 ▲同 桂 △8六歩 ▲7九桂 △8七歩成 ▲同 桂 △8五桂(下図)
まで98手で後手の勝ち
後手は途中図の△9八銀の腹銀が急所の寄せ方です。
8七の地点を集中的に攻めることで先手は受けが困難になりました。
投了図以下は▲7八玉と指すくらいですが、△7七桂成▲同金△8五銀と自然に攻めを続けていけば勝てる将棋です。
中盤まで難関な勝負が続きましたが、先手の一瞬のミスをとがめた好局でした。
まとめ
・ツノ銀雁木に対する菊水矢倉は一つの有力な対抗策です。
雁木側としては攻めの手掛かりを作るためにまずは桂交換を目指しましょう。
・△8六歩から一歩を手にする手順では▲8五歩とフタをする手段には注意を払いましょう。
もしその後の展開に自信が持てないのなら△8六歩と指すタイミングをよく考えるのがいいです。
・たかが一歩されど一歩です。「一歩千金」という言葉があるように攻めを続けるためには一歩をも大切にすることが上達への早道です。
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/77294
開始日時:2013/08/30 15:30:00
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+ponanza-990XEE+BlunderXX_Q6700_2c+20130830153000
先手:ponanza-990XEE
後手:BlunderXX_Q6700_2c
菊水矢倉には桂頭から攻めていく順も有力です。
ぜひ参考棋譜を確認してください。