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相居飛車入門におすすめ!上野裕和五段著【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編

はじめに

相居飛車戦は矢倉、角換わり、相掛かり、一手損角換わり、横歩取り、そして最近では雁木や戦型分類の難しい力戦の将棋もあるため、いちから相居飛車戦を学びたい場合にどれから手を付けていいのかわからないという声をよく聞きます。

今回おすすめする上野裕和五段著【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編は、相居飛車を総合的に扱った内容で、これから相居飛車戦を学びたいという人にとって、とても有益な一冊です。

今回の記事ではその本の内容をポイントを絞って紹介していきたいと思います。

本の目次と内容

上野裕和五段は級位者に対する指導のうまさに定評があり、本書でも読んでいるとその雰囲気が十分に伝わってきます。

目次は以下のようになっています。

第1部 相居飛車の基礎知識

(相居飛車の基本六大戦法と囲いの基本 戦型決定の仕組みと手順)
第2部 歴史を振り返る

(相居飛車の歴史 相居飛車におけるキーワード)
第3部 相居飛車の六大戦法の解説

(角換わり―大ブレイク、相居飛車のエースに 矢倉―絶対エースがまさかのピンチ 相掛かり―飛車先を交換しない新型登場 ほか)

また、ブレイクタイムとしてコラムが10本収録されています。

はじめにで上野五段から本書をおすすめする人について書かれています。(以下、引用)

①相居飛車の基本と全体像をざっくり知りたい方

②この5年の相居飛車がどう変わったのか、知りたい方

③指し手の符号が多い本を読むのが苦手な方

④今指されている最新形の意味を知りたい方(はじめにより)

現在、相居飛車戦は激動の時代で、10年前まで振り飛車戦も含めてすべての戦法の間で一番指されていたといっても過言ではない矢倉の採用率がかなり減っています。

その分、相居飛車戦では角換わりの将棋が増えました。

そのあたりの相居飛車戦の流行の変遷に関しても本書は詳しく書かれています。

本の構成としてはよくある形式の将棋本とは少し違っていて、1ページに将棋の図面がなく解説だけが書かれているページがあったり、局面図に関しても→の表記や部分的にグレーで囲まれている箇所があったりなど、随所に工夫がされています。

また、局面図下部の脚注もかなり多めで親切な作りです。

第1部 相居飛車の基礎知識

第1部では、相居飛車の基本が解説されています。

第1部を読むことでこれから続いていく第2部、第3部の内容がより理解できるという親切設計です。

「相居飛車って何ですか?」といった基礎的な内容からはじまるので、相居飛車に関して全く知識がないとう方にとってもすんなりと内容が入ってくると思います。

上野五段は相居飛車全体の特徴として以下の3つがあるとしています。(以下、引用)

①激しい攻め合いになるケースが多い

②守備よりも攻撃を重視する

③先後同型が多い

(p20より)

そしてその3つの理由が次ページからとてもわかりやすく解説されています。

特に③の先後同型が多いというのは普段、連盟モバイル中継等でプロ公式戦を観戦している人は感じているのではないでしょうか。

(例として下図)

手数=38 △4四歩 まで
後手:後手
後手の持駒:角 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v金 ・v玉v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v銀v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v銀v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手:先手
先手の持駒:角 
手数=38  △4四歩  まで

言われてみれば、先後同型になりやすいのは矢倉脇システムや角換わり腰掛け銀などの相居飛車戦であり、上野五段の鋭い着想だなと感じました。

その後、おおまかに角換わり、矢倉、相掛かり、横歩取り、一手損角換わり、雁木の「相居飛車六代戦法」について説明がされています。

また、その六代戦法がどのような過程を経て、戦型決定がされるのかについても詳しいです。

第2部 歴史を振り返る

第2部では相居飛車の歴史が解説されています。

第2部を読むことで以下のことがわかってきます。(以下、引用)

①矢倉、角換わり、相掛かり、横歩取り、一手損角換わり、雁木、の六大戦法が、どのように進化したか、また関連しているのか

②どのような変遷を経て、現在の流行戦型にたどり着いたのか

(p60より)

相居飛車戦はかなり古くからの歴史があり、また最近ではそういった昔に指されていた指し方が再注目されるということも多いです。

(例、雁木や角換わり△6二金型)

参考ツイート

参考ツイートとして私のツイートを挙げさせていただきました。

このツイートは大きな反響があり、多くのインプレッションがありました。

参考記事

参考 江戸時代、二人の天才少年の命を懸けた対局があった――現代によみがえる300年前の「棋譜」ねとらぼ

このように、現代の相居飛車戦を理解するうえでその歴史を振り返るのは理解度を深める意味でもとても有益です。

本書を読むことで相居飛車の六大戦法の歴史の知識がついていきます。

また、歴史に関してもそれぞれの戦型において昭和時代平成25年平成30年と3つのカテゴリー別に分類されているのもうれしい限りです。

第3部 相居飛車戦の六大戦法の解説

おおまかな戦型決定や歴史を学んできたところで第3部でそれぞれの戦法の今を深堀りしていきます。

第3部を読んで理解することによって、具体的に現在のプロ将棋の序盤戦術を理解できるようになります。

それぞれの戦型の章は率直に言って、とても丁寧に解説されています。

ここまで丁寧にわかりやすく解説できるのは上野五段以外にいないのでは?と感じされられます。

例えば、角換わりに関しては棒銀、早繰り銀、腰掛け銀に関してそれぞれわかりやすく解説されていますし、その他の戦型も同様です。

この第3部は何度も振り返って読みかえすことでさらに理解度が増していくと思います。

まずは、ネット将棋や練習将棋で相居飛車戦を指してみて、その後わからない箇所が出てきたら再度読み返すのがよいでしょう。

上野裕和五段著【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編のまとめ

本書はページ数が272ページと大ボリュームで読み応えのある一冊です。

また、発売日が私の著書、コンピュータ発! 現代将棋新定跡と同時期だったこともあり、発売日当日に私は購入して読ませていただきました。

発売から半年強が経ちましたが、今読んでも十分すぎる内容です。

これから相居飛車戦を指していきたい、プロ公式戦の相居飛車の将棋を理解したいという方にとってはぴったりの一冊でしょう。

また、本書を読んで理解が深まり、さらに高度な内容の相居飛車戦を学びたいという方には片上大輔七段著「将棋 平成新手白書【相居飛車編】」がおすすめです。

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参考 片上大輔七段著「将棋 平成新手白書 居飛車編」レビュー コンピュータ将棋研究Blog

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