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村田顕弘六段著「対振り飛車の大革命エルモ囲い急戦」レビュー

はじめに

刊行が待ち遠しかったelmo囲い急戦の本がついに発売となりました。

著者は意欲的な序盤研究に定評のある村田顕弘六段

以前に村田六段の横歩取りの本でおおいに勉強させていただきました。

現代横歩取りのすべて (マイナビ将棋BOOKS)

私は早速、発売日当日にelmo囲い急戦の本を書店で購入しました。

今回の記事では大まかではありますが、このelmo囲い急戦の戦術書をレビューしていきたいと思います。

本の目次と内容

冒頭でも書きましたが、村田六段は意欲的な序盤戦術を指し、また居飛車・振り飛車両方指しこなすことができる棋士です。

本書の目次は以下のようになっています。

対振り飛車の大革命 エルモ囲い急戦 目次

序 章 エルモ囲いとは?
エルモ囲い概要

第1章 エルモ囲いVS四間飛車
第1節 ▲エルモ囲いVS△4三銀型四間飛車
第2節 ▲エルモ囲いVS△3二銀型四間飛車

第2章 エルモ囲いVS三間飛車
第1節 ▲5六歩型エルモ囲い
第2節 ▲5六銀型エルモ囲い

第3章 エルモ囲いVS振り飛車穴熊
第1節 ▲エルモ囲いVS△四間穴熊
第2節 ▲エルモ囲いVS△三間穴熊

第4章 後手番エルモ囲い
第1節 ▲四間飛車VS△エルモ囲い
第2節 ▲三間飛車VS△エルモ囲い

第5章 エルモ囲い 実戦編

角道を止める四間飛車と三間飛車を中心として仕掛け周辺を重点的に研究しています。

また、振り飛車側が穴熊の場合と、後手番でのelmo囲い急戦、そして実戦編も収録されています。

はじめにで村田六段からメッセージがありました。(以下、引用)

A・Iをベースに作成したので、形勢判断や手順は新鮮に思われる反面、戸惑いもあることだと思いますが、指したい変化や展開を取り入れた皆さまが『エルモマスター』になられることを願って、ご挨拶とさせて頂きます。(はじめにより)

このように書かれている通り、本書はソフトの見解(elmo2017年5月バージョン)をふんだんに取り入れて制作されています。

※elmo2017年5月バージョンを村田六段が使用したのは開発者の瀧澤誠さん(探索部開発のやねうらおさん)に敬意を表して

しかし、ただやみくもにソフトの見解を取り入れたのではなく、プロの目からみた見解も交えて結論が下されているのが斬新です。

ページ数は224pで通常のマイナビ出版の棋書と同じページ数です。

序 章 エルモ囲いとは?

elmo囲いについて、その成り立ちを開発者の名前も挙げて説明されています。

またソフトで指され始めてからどのような経緯を経てプロの間でも指されるようになったのかも解説されています。

第1章 エルモ囲いVS四間飛車

対四間飛車はelmo囲い急戦を指す上で最も多く出くわすケースだと思います。(下図)

上図を基本図として振り飛車側が△4五歩と突いてくる指し方、また△4三銀型、それぞれを相手にし先手の仕掛けを研究しています。

形勢判断は従来の棋書では互角と表記していたような局面を、先手+100~200点、先手約-100点などと互角の範囲でもより細かく形勢判断を記しているのが特徴的です。

よって作戦勝ち、作戦負けといった微妙なニュアンスの局面の形勢判断もわかりやすいです。

結果図のelmo評価値は先手約+200点が出ているものの、明確な狙い筋に欠けるので、できれば避けたい進行だと思う。

p50より)

といったようにソフトはやや先手有利でも人間の目から見ると避けたい変化などもわかり大変興味深いです。

第2章 エルモ囲いVS三間飛車

ノーマル三間飛車に対してもelmo囲い急戦は有力です。(下図)

上図を基本図とし、①▲5六歩~▲5七銀右と指す指し方②▲4六歩~▲4七銀~▲5六銀と腰掛け銀にする指し方の2通りが解説されています。

そしてネット上ではelmo囲い急戦に対する有力な対抗策と見られている△5三銀・△4三金型の解説もされているので要チェックです。

(下図 p103より)

章の最後にはそれぞれの形のまとめが書かれているので記憶の整理に役立ちます。

第3章 エルモ囲いVS振り飛車穴熊

この章では第一節 VS後手四間穴熊第二節 VS後手三間穴熊として2つのパターンが解説されていきます。

▲6九玉型elmo囲いで対抗する指し方も丁寧に解説されています。(下図)

上図はその研究の元となった池永四段対村田六段の一局の局面です。

この将棋を元としてさらに深堀りして変化手順が研究されています。

個人的にも対振り飛車穴熊にはこの▲6九玉型elmo囲いは優秀だと感じています

ネット将棋でもたくさん経験がありますが、6九に玉がいると後手からの△7五歩のような攻め筋から当たりを避けている意味合いがあります。

また、村田六段独自の研究と思われる▲6九玉・▲7八金型についても新研究がされています。

第4章 後手番エルモ囲い

この章では先手四間飛車、先手三間飛車を相手に後手番でelmo囲い急戦で挑む将棋が研究されています。

先後一手違うだけですが、その微妙な違いが生む手順の変化が面白いところです。

先手番であってもやはり▲6七金・▲4六銀型の三間飛車は有力とされています。(下図 p207より)

第5章 エルモ囲い 実戦編

まず、2019年1月26に行われた第68期王将戦第二局目▲久保王将対△渡辺棋王の将棋が取り上げられています。(下図)

先手中飛車に対してelmo囲い急戦が成立するかが焦点となっています。

次に、2019年2月25日に行われた竜王戦6組ランキング戦▲西田四段対△本田四段の対局が取り上げられています。(下図)

飛車先保留の右四間飛車も意欲的な構想だと思います。

「対振り飛車の大革命エルモ囲い急戦」のまとめ

対振り飛車のelmo囲い急戦はまだプロ間で指され始めてから間もないものの、本書は仕掛け周辺をかなり深いところまで研究している意欲的な一冊です。

本書の最も特徴的なところはソフトの見解をふんだんに取り入れているところだと思います。

結果図の評価値もそうですし、指し手に関してもプロの目から見たソフトの指し手の見解が随所で披露されています。

普段コンピュータ将棋ソフトを研究に利用している方にとってはソフトの使い方がわかりやすく解説されているとも取ることができます。

本書を活用して対振り飛車elmo囲い急戦を駆使して勝つことを目指すのもよし、ソフト研究の仕方を学ぶもよしだと思います。

本書を大いに活用し自身の棋力をワンランクアップしましょう!!

参考記事

elmo囲い急戦の基本!新感覚の振り飛車対策

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