はじめに
アヒル戦法は下図のような飛車打ちの隙が無い低い陣形に組み、さばきを狙う戦法です。
持ち時間の短いネット将棋では指す人がいて、中にはアヒル戦法しか指さないようなスペシャリストもいるほどです。
今回の記事では将棋倶楽部24のJKishi18gouの棋譜を題材としてアヒル戦法に対する戦い方を学んでいきたいと思います。
JKishi18gouから学ぶアヒル戦法の対策の実戦例
実戦例その1
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/236453
開始日時:2018/01/30 23:44:53
棋戦:R対局(早指2)
先手:先手
後手:JKishi18gou(3117)
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3四歩 ▲9六歩 △3三角 ▲9七角 △6二銀 ▲2五歩(下図)
アヒル戦法は▲7六歩を突かずに戦うのが特徴です。
角は▲9六歩~▲9七角として端から使っていきます。
(上図からの指し手)
△7四歩 ▲6八銀 △8四歩 ▲4八銀 △3二銀▲7九金 △9四歩 ▲2六飛 △4二玉 ▲3九金 △7三銀 ▲5八玉(下図)
アヒル囲いは▲2六飛+▲6八銀、▲4八銀、▲7九金、▲3九金、▲5八玉で完成形です。
完成までの手順が覚えやすいので級位者間でも指されています。
(上図からの指し手)
△8五歩 ▲5六飛 △5二金右 ▲1六歩 △4四歩▲1五歩 △4三銀(下図)
今回アヒル戦法の対策を調べるためにJKishi18gouの棋譜を14局調べましたが、最も多かったのがこの△4三銀型でした。
アヒル戦法は低い陣形からの大駒のさばきを狙っているので対策としてはバランスの良い構えを築き、さばきを封じるのがよさそうです。
(上図からの指し手)
▲3六歩 △6四銀 ▲3七桂 △3二玉 ▲6六飛 △7五歩(下図)
アヒル戦法は攻めが決まると厄介な戦法ですが、その攻め筋は狙いが単調になりやすいのでひとつひとつ丁寧に受けていけば勝利が近づいてきます。
後手は△6四銀~△3二玉と駒組みしたのが手堅い手順で、△6四銀を入れずに△3二玉と寄ると▲5三角成(参考図)を与えてややこしくなります。
ポイント
▲5三角成はアヒル戦法の狙い筋です。注意して駒組みをしましょう。
また、▲6六飛に対して△7五歩も大事な一手で、ここで△2二玉とすると以下▲6四飛△同歩▲同角(参考図)と進んでこれは先手が有利となります。(先手+326)
Check
先手陣は飛車打ちの隙がないので、このような飛車を切っていく攻めがしやすいです。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲8六歩 △9五歩 ▲同 歩 △4五歩▲5六飛 △5五銀(下図)
ここまで後手は先手からの攻め筋をうまく回避してきました。先手は▲8六歩と動きましたが、△9五歩~△4五歩が好手で先手の飛車を捕まえて後手優勢です。
この将棋の総棋譜は以下から
実戦例その2
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/236454
開始日時:2018/01/22 22:56:35
棋戦:R対局(早指2)
先手:先手
後手:JKishi18gou(3070)
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲2六歩 △8四歩 ▲9六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲9七角 △5二玉(下図)
アヒル戦法対策の将棋をもう一局みていきます。
やはり先手は角を9七から使っていきます。後手としては▲9七角のタイミングで5三の地点に利きがあるようにしましょう。
(上図からの指し手)
▲4八銀 △8五歩 ▲2六飛 △9四歩▲6八銀 △7二銀 ▲5六飛 △4二銀(下図)
基本的な考え方として数の攻めには数の受けです。
よって▲5六飛には△4二銀として5筋を受けます。
(上図からの指し手)
▲3九金 △3二金 ▲7九金 △7四歩 ▲5八玉 △4四歩 ▲1六歩 △7三銀▲3六歩 △6四銀(下図)
先手はアヒル囲いを完成させました。対する後手は隙を作らないよう駒組みをして手堅い指し回しです。
上図△6四銀に対して▲6六飛として次に▲6四飛を狙ってきた場合は△7五銀(参考図)で後手大丈夫です。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △4三銀 ▲7七桂 △5四歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲6六飛 △4二角(下図)
先手は▲7六歩~▲7七桂として左桂を活用します。
後手は△4三銀型がバランスの良い構えです。▲3五歩△同歩▲6六飛には△4二角が大事な一手です。
△4二角に代えて△4五歩とすると以下▲6四飛△同歩▲同角△9二飛▲3七桂(参考図)と進んでいっぺんに勝負形となってしまいます。
注意
繰り返しになりますが、アヒル戦法では▲6四飛として飛車を切り捨てて攻めるような筋が自陣の陣形が低いので成立しやすいです。注意しましょう。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2四歩 △同 歩▲1五歩 △4一玉 ▲1七桂 △5二金 ▲2六飛 △9五歩 ▲同 歩 △9六歩(下図)
先手は後手にさばきを封じられて困りました。手が作れず▲2六飛としましたが、後手からの△9五歩~△9六歩が先手陣の欠陥をついた指し回しで後手優勢となりました。
この将棋の総棋譜は以下から
アヒル戦法対策のワンポイント
・△9五香とするときは二枚替えの筋に注意する。
上図のような局面になると先手から▲4二角成△同金▲9五香として角と銀香交換になります。
局面にもよりますが基本的にはこの二枚替えは後手は避けるべきです。
△9五香と走ってもいい局面は上図のように、
・飛車の横利き(▲2六飛)で▲9六歩とできない
・9七角のラインに後手の金銀が入っていない
といった条件が必要となります。
・3四の歩は取られても大丈夫
アヒル戦法を相手にしていると▲3六飛として次に3四の歩を取ろうとしてくるケースがよくあります。
結論としては3四の歩は取られても大丈夫です。
▲3四飛のタイミングで六段目から飛車の横利きがそれたのを見て△9五歩から角を狙えば後手十分です。(下図)
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/236459